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戦国武将と漢詩(1) [漢詩]

戦国武将と言えば、「年がら年中、合戦ばかりしていた」、「残虐」というイメージが一般的にあります。
前者の代表は上杉謙信で48年の人生で、70勝2敗ですので、初陣した15歳から年間2~3回戦っていたことになります。
後者の代表は織田信長で、宿敵の朝倉義景と浅井久政・浅井長政父子の頭蓋骨を金杯にしたというエピソードが有名です。(注:近年、俗説という主張が有力)

例外として三好、織田、豊臣らの近畿の大名家等は、千利休などの茶道や里村紹巴などの歌道で文化的な先進を誇っていたイメージがあります。
しかし、東北の伊達、最上等の諸大名が教養的に劣っていたというわけではありません。

私が、漢詩を好きになった一因として、地元の英雄である伊達政宗が晩年に見事な漢詩を創作しており、感銘を受けたというものがあります。
余談ですが、司馬遼太郎の短編『馬上少年過ぐ』は、河井継之助が主人公である英雄児も同掲載されており、屈指の名作だと思っております。

馬上少年過 世平白髪多 残躯天所赦 不楽是如何
 馬上少年過ぐ 世平らかにして白髪多し 残躯天の赦す所 楽しまずして是を如何にせん
~戦場に馬を馳せた青春の日々は遠く過ぎ去った。今や天下は泰平になり、髪には白髪が多くなった。
生き残ったこの人生 楽しまないでどうする 天も許すところだろう~

”残躯天所赦”のくだりに、政宗の自嘲あるいは自負を感じる余韻が残り良い詩だと思います。


今年の後半に読んだ『北天に楽土あり』の主人公であり最上義光(ちなみに政宗の叔父です)の自省の漢詩も見事です。

一生居天敬全 今日命帰天 六十余霜事 対花拍手眠
  一生居するに敬を全うし、 今日命天に帰す 六十余霜の事、 花に対ひ手を拍ちて眠らん
~我が一生は敬いを全うし、今日、この命は天に帰る。六十余年の月日はただ茫々。咲く花に感謝を込めて手を叩き、今は眠ろう~

”対花拍手眠”のくだりに、羽州の狐とあだ名される義光が実は優しい心根だったんだなと感じられ、ホロリとします。

◆伝えたいこと 奥羽へき地といえども決して”文”においても劣っていたわけではなかったことが分かっていただけたでしょうか?こんな素晴らしい漢詩を創作できるんですから。 東北の”レガシー”としても先人の”文”を学び直して行きたいと思います。 みなさんも、こんな入口から漢詩の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか?



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