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信長の野望と小説(10) [歴史小説とゲーム]

「破天の剣 著:天野純希」を完読してから、なぜか体から熱が去りません。




結局、Blogにどのように書くか考えながら、ウォーキングしてたら、2時間を過ぎてました。
何だか心に響きすぎて、上手く書ける気がしないんです。
(帯に書店員が強力推薦と書かれているのもダテではありません!!)
それはともかくとして、書きたい小説なので本筋に戻ります。
この物語は、島津氏の中興の祖である島津日新斎から始まり、父の島津貴久、島津四兄弟(長男:義久、次男:義弘、三男:歳久、四男:家久)の戦国中~末期の島津氏を描いた物語です。
主人公は末弟の家久ですが、全体的には家族を描いた物語と言えるでしょう。
家久は、ある出生に関する謎を抱えたまま軍神と呼ばれるまで成長します。最後は、秀吉の九州征伐軍に破れ、豊臣軍と内通者による共謀により、毒殺されるという悲劇的な最期を迎えます。
しかし、この小説は悲しみも残るのですが、不思議と良い余韻が残るんです。
印象的なセリフをいくつかご紹介します。
1.「父上。家久にも、お言葉を」声をかけると、わずかにこちらへ顔を向け、小さく頷く。
「家久は、軍法戦術に妙を得たり」用兵の才が、傑出している。そう、父ははっきりと言った。近習が筆を走らせるのを確かめると、再び父が口を開いた。
「そして、紛うことなく我が血を引いた、いとしき孫である」父の目には、慈愛の色が浮かんでいる。島津家中興の英雄ではなく、幾多の合戦を勝ち抜いた
歴戦の古兵でもない。それは孫を慈しむ、当たり前の祖父の顔だった。それから二日後の一二月一三日、日新斎は眠るように息を引き取った。
 コメント:島津家中興の祖である島津日新斎、その後の家久の人生を宿命づける運命の言葉です。この言葉を読後に読み返すことをお勧めします。

2.「また、誰も俺の言うことを聞いてくれん。御屋形にも嫌われた。」
弟の目には大粒の涙が浮かんでいるのを見たからだ。「俺は戦の他にはなんの役にも立てん。俺から、生きる場所を奪わないでくれ・・・」
最後は嗚咽に変わっていた。孤独だっただろう。出自に加え、傑出した才のせいで他者の理解を得られない。軍才以外の多くを持ち合わせず、周囲に上手く溶け込むこともできない。
生きる場所が戦場にしかないなどと、悲しく思い定めるのも無理はなかった。もっと守ってやるべきだった。もっと甘えさせてやるべきだった。理屈ではない。
それが、兄の務めではなかったか。歳久は後悔とともに、「わかった」と吐き出した。「俺が、義久兄者にとりなしてやる。お前はここで待て。」
言うや、歳久は立ち上がった。弟の返事を待たず、陣屋を飛び出す。
 コメント:島津家の領土が拡大するにつれ、長兄の義久と末弟の家久の隙間は広がり続け、遂に対大友氏との戦で決定的な亀裂を迎えます。ただし、彼は一人ではありませんでした。確かに理解者はいました。すぐ上の兄である島津歳久です。

3.いつか戦が終わったら、大きな船を造りたかった。その船に葉や子供たちを乗せて、海の外に連れ出してやりたかった。その夢も叶えられそうにない。悔しいなあ。
俺の居場所は、血腥い戦場なんかじゃなかった。そのことが、やっとわかったのに。すまない。もう一度唱えて、家久は目蓋を閉じた。
 コメント:軍法の天才ここに死す。彼は最後に、毒殺された相手への憎悪ではなく、愛し愛された家族と海(夢)への思いに心巡らせ、生涯を終えたのです。

なんとなく物語の雰囲気が伝わったら幸いです。


この物語の家久は、国士無双の故事成語の語源となった中国前漢時代の英雄である韓信と被ります。
1.緻密な情報収集と天才的な閃きによる神がかりの軍略、2.どこか孤独をかかえている、3.軍事以外には無頓着である4、悲劇的な最期を迎えるなど
世間の多くは、国士無双の韓信を知っても家久を知りません。親友を自ら裏切り、主君である劉邦に謀殺された韓信と豊臣軍と内通者による共謀により、毒殺された家久
どちらが幸せだったのでしょうか?少なくとも家久は島津一族の愛に包まれて黄泉路に向かいました。




◇追記
「島津に暗君なし」と、俗に言われています。尚武の気風に溢れ、戦国・江戸初期・中期・幕末時代の変革期にそれぞれ名君を輩出したことからそう言われてるそうです。
幕末では、西郷隆盛を抜擢し、幕末一の賢君と言われた島津斉彬が有名ですね。、
要因としては、いくつか考えられます。
1.一説に源頼朝が祖先であるといわれるほどの鎌倉以来の名族であり、文化的な素養が高かったこと。
2.京の中央政界(五摂家筆頭である近衛家等)と独自のコネクションがあったこと。
3.地勢的に薩摩(鹿児島県)という中央政権の手の届きにくい僻地であったこと。
4.海に面した立地により海外の情報が入ってきやすかったこと。

歴代の信長の野望でも島津家は武将が軒並み能力が高くプレイしやすいです。しかも序盤から鉄砲の配備が活用できるのも魅力です。
僕は東北人ですが、11月30日発売の「信長の野望大志」を島津家でプレイしたくなりました。みなさんはどうですか?











島津家久という人物に新しい輝きをあてた著者に心から敬意を。
タグ:島津家久
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