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信長の野望と小説(13) [歴史小説とゲーム]

織田信長ははたして、どんな人物だったのでしょうか?
山岡壮八は、激情を秘めた英雄であり、尊王の志を有する英雄。
司馬遼太郎は、合理主義者でかつ独特の美意識を有している芸術家。
として、描いています。




しかし、私の印象では、いわゆる戦国時代の三英傑の中で、織田信長の人物像はひどく分かりにくいです。

「あるじは信長 著:岩井三四二」では、信長という人物を、近習(後の佐々成政)、津島社の神主、祐筆、武将、同朋衆(お世話係)、御小人(相撲取り)、近習、旗本(旧浅井家家臣。秀吉により調略)という様々な立場の人物の目を通して、描いています。



結論からいうと、結局筆者は「うつけで候」とさじを投げて、信長周辺の人物の描写を中心に物語を描くことに力点を置いています。
それにより、戦国の時代を終わらせるためのエネルギー体としての、信長という偶像を描写しているのではないかと感じました。

近習の佐々成政からは、武将とはかくありたいと思わせる「頼うだる方」であり、戦国のパイオニア。
印象的だった箇所:-そのとき不意に、信長が父信秀の葬式で抹香をつかみ投げた姿が思い浮かんだ。衝撃的な姿だったが、その意味が今ようやくわかった。信長は抹香を投げつけて亡き父を否定したのだ。しかも父だけではない。信長は、兄弟であっても逆らう者は打ち倒した。
凡人にできないことを、信長はいとも軽々とやってのけた。だからこそあの若さで尾張一国を支配していられるのだ。
 コメント:さすが、信長様。人にできないことを平然とやってのける。そこに憧れる。痺れる。
    
浪費壁のある津島牛頭天王社の神主からは、戦好きだが、羽振りのよい産子。ただし、このごろは・・・
印象的だった箇所:-言葉もなかった。神仏の祟りなど、何とも思っていないというのか。そういえば、岐阜へ来てからやたら祈祷を頼まれるので不思議に思っていた。このせいか。みな比叡山を焼き討ちすると知って、仏ならぬ神に頼ろうとしたのか。「さような上様ゆえ、いくら産土神であろうと、容赦はなさらぬと思いますな」-
 コメント:人々はどの時代でも神仏に心の安定を願うもの。信長はその秩序すら揺らすもの。

祐筆・武将からは、怖しい上司。しかし、各々期待する役割を果たすのであれば、抜擢する名君(逆に言えば、果たさなければ不要。家臣からは暴君)
印象的だった箇所:-「わざわざ窮屈な長袴に烏帽子なんどをきるのは、何のためと思うておる。今日を抑えるためじゃろうが。うるさい公家どもを黙らせる薬を効かせようと思うたに、そなた、わがもくろみを台無しにするつもりか!」・・などと言い訳をすれば、怒りの火に油を注ぐことになるのは必定だった。長諳としてはただ頭を下げるしかなかった。
印象的だった箇所:「-加勢をお願いするのはな、こちらの首が胴からはなれたときよ。さような覚悟でのうて、なんで一国が宰領できるものか」-
印象的だった箇所:「今の旦那さまは、お幸せじゃ。穏やかな顔をしてござる。加賀におられたころとは、まるで飢えたオオカミと腹のふくれた飼い犬ほどのちがいがございますぞ」-ま、これが似合いかのう。
 コメント:ブラック企業の原型ここにアリ。人生万事塞翁が馬ですな。


同朋衆(お世話係)からは、わがままな主人。自分は四六時中命令を待っている持ち物に過ぎない。
印象的だった箇所:たかだか自分の言いつけを守らなかったというだけで、何と傲慢で理不尽な仕打ちなのか、ひどすぎる。あまりにひどすぎる・・・。恐怖は消えて、熱い火が腹の底に熾ってきた。もう主人も家来もなかった。
 コメント:キーワードは、埃。誇り。不意に人生に現れる機微に人はどう処するべきか。副題が官能的!!

相撲取りからは、派手好みで、目立つことならばなんでも良い主人。
印象的だった箇所:「おこう、そなたはやはり菩薩様じゃ」と呼びかけると、瞼の裏でおこうがにっこりと微笑んだ。」
 コメント:いつの時代でも女性は強し。塞翁が馬もお見通し。

近習(注)からは、図抜けた能力を見せるが、”たわけ”な主人。
印象的だった箇所:「道三どの、あの世よりご覧じろ。信長はたわけじゃというわしの見立てのほうが、ただしかったではござらぬか」だが、道三を恨むわけにはいかない。信長をあるじに選んだのは、自分なのだ。
 コメント:案外、うつけを演じた尾張統一前の信長こそ、信長の本性かも。
(注)近習の名は、猪子兵助(注:正徳寺の会見に斉藤道三の家臣として立会った。最後は、本能寺の変で討ち死)


旗本(旧浅井家家臣)からは、”災い”をもたらす存在そのもの。
印象的だった箇所:そうだ、信長さえ現れなかったら、みなのどかに暮らしていられたはずだ。災いをもたらしたのは信長だ。恨むなら信長を恨んでくれ。なにもかも破壊され、振り回されたのはこちらもおなじだ。
 コメント:中世の戦国時代に生まれていて、彼よりもうまくいき抜く自信なんてないです・・・


◇締めとして あるいは、”信長”という存在は、一個の人格ではなく、時代の変革期に生まれた彗星のようなものではなかった。そう読後に感じました。

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タグ:織田信長
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