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信長の野望と小説(9) [歴史小説とゲーム]

人物の評価が時代とともに変わってくることは多々あります。
今回紹介させていただく、最上義光もその一人です。
NHKの大河ドラマ「独眼竜政宗」では、陰険な策謀家として原田芳雄が好演し、永らくダーティーなイメージが付きまといました。
曰く、「羽州の狐」。伊達政宗の独眼竜とは大違いです。
しかしです、彼が上杉景勝を食い止めたおかげで結果として天下泰平の世を招いたとも言えるのです。
大部分の大名は、昨日の記事で紹介した 岩井三四二著「とまどい関ヶ原収録の”百尺竿頭に立つ”」で安国寺恵瓊が毛利輝元
を説得する時の台詞「良くて天下を、悪くても戦国に戻るだけ」という感じで関ヶ原に臨んでいました。
とまどい関ヶ原(PHP文芸文庫:著 岩井三四二)




1.並外れた武略
上杉120万石の強兵を彼は、24万石という6分の1の兵力で出羽の地に抑え込む事に成功しています。
関ヶ原は半日で決着がつきましたが、当時天下最強の強兵といえば、上杉が第一に挙げられるほどであり、慶長・文禄の役では日本にとどまり、余力十分の状態ですので、並大抵の武略ではありません。
もし、短期間に最上領を上杉が征服していたら、時世に敏感な伊達家は従属するので、関ヶ原の東軍勝利の行方も関係なく、東北に上杉氏を主軸とした戦国大名連合が割拠していた可能性も考えられるのです。そうなると、反対側の中国・九州地方もどうなっていたかは容易に想像可能です。
だから、家康もその功績を多とし、24万石から一挙に57万石に加増したのでしょう。

2.優れた先見性
天正19年(1591年)に、徳川家康が奥州九戸の乱を平定するために福島在の大森に着陣しているとき、義光が10歳になった最上家親(最上藩2代藩主)をつれて行き、「この倅をさしあげます。自分の代わりに召し使ってくだされ」と申し出た。家康は「国持ち大名の子息を家来にするとは、初めてのこと」と非常によろこんだと伝えられています。これは、秀吉が全盛の時期の出来事であり、その時点で徳川家康にほとんど臣従していたかのような先見性には驚かされる。
また、東北の大名としては異例なほど鉄砲の集団運用に着目しています。
酒田港経由で上方より大量の銃器・火薬を入手し、また堺から鉄砲鍛冶を招聘してました。
天正2年(1574年)の伊達・上山勢との戦闘や、寒河江城攻略においては集団射撃で敵を破っていますし、前述の上杉家との戦い(長谷堂城の戦い)
でも、上杉勢は最上勢の射撃に苦しめられたとの記述が多くの作家の著書に散見されます。

3.優れた内政
義光の存命中は一揆がほとんど起きなかったと言われています。義光の善政によって江戸時代には後に庄内を支配した酒井家と比較され、
「最上源五郎(最上義光)は役(年貢)をばかけぬ(軽くする) 今の殿様 雑魚・かじかこまで役かける」という唄があったそうです。
また、治水工事を積極的に推進し、北楯大堰・因幡堰などの疏水を開削して用水問題を解決して、庄内平野の開発を進め、農業生産力を大きく向上。
最上時代に築かれたこれらの疏水は、今なお庄内平野で活用され続けています。

4.優しい男
伊達家に嫁いだ妹・義姫を溺愛していたと言われ、彼女とやりとりした手紙が現在も多数残されています。
(その内容も、政治・文学などどいうものではなく、愛情を直情的に示したり、甘えた感じのものまであります。)
また、妹の哀訴により、当時四方を敵に囲まれていた政宗との戦を止めたり、停戦の仲介をしたりしています。
末の娘の駒姫が豊臣秀次事件の煽りで、惨く斬首されたときには、義光夫妻の悲嘆は激しく、悲報を聞いた義光は数日間食事を摂ることもままなりませんでした。
義光夫人もこの時、悲しみのあまり亡くなっています。

このように、近年再評価された最上義光を歴史小説で再発見してはいかがでしょうか?
北天に楽土あり 最上義光伝 (徳間文庫:著 天野純希)




さむらい道(上)最上義光表の合戦・奥の合戦(中央公論新社:著 高橋義夫)



さむらい道(下) 最上義光もうひとつの関ケ原(中央公論新社:著 高橋義夫)




最上義光 (人物文庫:著 永岡慶之助)





◇追記
最上義光は今なお山形の人々に深く愛されています。信長の野望最新作「信長の野望大志」(11月30日発売)の好きな戦国武将では堂々一位に輝いています。







信長の野望大志特別企画「地域別人気武将ランキング」はこちらから→http://www.gamecity.ne.jp/taishi/area_rank.html

◇余談
つい先日のYahooニュースの記事(河北新報より)で山形大学の一部の教授によるひどいパワハラが報じられています。
こちらから→https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171110-00000002-khks-soci

「最上源五郎(最上義光)は役をばかけぬ」と謡われた彼が地元のこの様子を見たらどう思うのでしょうか?
タグ:最上義光
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